進化論/文化論/経済論、様々な切り口から見る肉食の受容史
本書題名に掲げる命題について考察した、食物ルポルタージュ。進化論(例えば肉=美味だからという主観論ではなく、何故ヒトは肉の風味を佳いものと見做したのかといった観点から論ずる)、倫理・宗教論、権威やセクシュアリティなどの文化論、経済面といった様々な角度から考察し、巻末では肉消費量の急伸による食料危機について論じる。
本来は食肉目に分類されるジャイアントパンダがほぼ菜食主義になったのは、うま味受容体遺伝子が上手く機能していないためではないかとか、ツタンカーメン王の副葬品に香油処理された牛・家禽類の肉があったとか、アメリカ人の年間食肉摂取量は実に125㎏に上るだとか、肉関係の蘊蓄がちらほら含まれていて面白いのだが、全体的にどうも冗長(欧米のこの手の書籍によく感じること)。肉食を許容する「雑食の人」と菜食主義者の平和的共存に多くの紙幅を割くが、何故これが欧米の「個人主義」の下に実現できないのか、全く理解に苦しむ。
その他、白人視点と誤植が目に付く。主題は面白いのに、編集で損をしている印象。勿体無い。
目次
- はじめに なぜ肉に魅了されるのか
- 第1章 肉食動物の進化の物語
- 第2章 肉が私たちを人間にした
- 第3章 肉食の栄養神話
- 第4章 惹きつけられる味の秘密
- 第5章 肉をおいしくする方法
- 第6章 もっともっと欲しくなるように
- 第7章 人は食べたものでできている
- 第8章 菜食主義が失敗したわけ
- 第9章 ベジタリアンになる人、なりにくい人
- 第10章 肉のタブーがある理由
- 第11章 急速に肉のとりこになるアジア
- 第12章 肉食と地球の未来
- エピローグ 栄養転換ステージ5へ
- 謝辞
- 解説(真柴隆弘)
本書で言及されている書物
- 75「小さな惑星の緑の食卓」フランシス・ムア・ラッペ
- 147「フード・ポリティクス」マリオン・ネスル
- 178「食養生(Dyetary)」アンドリュー・ボード
- 178「Meat:A Natural Symbol」ニック・フィデス