天然氷の蜜がけからハーゲンダッツまで、氷菓/アイスクリームの辿った道
題名通り、氷菓を含めたアイスクリーム食物史をまとめた1冊。欧州で誕生、米国で大きく成長し、今や世界中で大量に消費されているアイス(因みに世界のアイスの4分の1は米国で平らげられているらしい)。その誕生から21世紀現在の状況までを追った1冊。原料となるお砂糖は貴重で且つ冷蔵技術が未発達である時代の苦労、手回し機械の発明による省力化、冷蔵技術の進歩による爆発的な広がり…。かき氷状の評価も対象となるなら、より多くの地域の言及があってもよいと思うのだけれど、本書は欧州及び米国に軸が置かれている。
読んでいるうちに無性にアイスが恋しくなり、夜中に何度銅小鍋を引っ張り出して作ったことか。食事制限中の人が読むのには適していない本。文中誤植が複数個所あったのは残念。アイスがお好きな全ての人に。但し、夜中に読むことはお薦めしない。
目次
- 序章 みんながみんながアイスを愛してる
第1章 アイスクリーム草創期
- イタリア ― 氷とアイスクリームの誕生
- カフェ文化
- アイスクリーム草創期
第2章 旧世界と新世界で
- フランス人は流行を決める
- イギリスの女性料理研究家たち
- アップルパイと肩を並べて
- 商魂たくましい菓子職人
- アイスクリームは辺境へ
第3章 大衆化するアイスクリーム
- ハンドルを回して攪拌する
- 大量生産の時代へ
- みんな大好きホーキーポーキー
- 冷やし続けよ
第4章 アイスクリームの黄金時代
- どこにもかしこにもソーダ・ファウンテン
- アイスクリーム・ソーダ
- アイスクリーム・サンデー
- レストランと家庭のアイスクリーム
- ソーダ・ファウンテン ― ポップカルチャーの象徴
第5章 コーン・アイスクリームの誕生
- コーン・アイスクリームの登場
- コーン・アイスがアイスクリーム産業の後押しをする
- その他の新製品
- エスキモーパイ
- アイスクリームは上機嫌の味方
- バンとトラック
第6章 大量生産の時代
- 気象予報士はもういらない
- アイスクリームは戦場へ
- 戦後
- グッド・ヒューマーの配達員はわが町のヒーロー
- 添加物を入れる
- アイスクリームは公道へ
- ソフトアイスクリーム旋風
- デイリークイーン
- ハワード・ジョンソンと28のフレーバー
- プレミアム・アイスクリームの誕生
- ヨーロッパ風洗練の魅力
- ベン&ジェリー ― ファンキーでリッチ
第7章 新たなアイスクリームを求めて
- ヨーロッパ
- ロシア
- トルコ
- 中東
- アジア・太平洋地域
- アイスクリームの未来 ― 手作りアイスの復活
- 謝辞
- 訳者あとがき
- 写真ならびに図版への謝辞
- 参考文献
- レシピ
- 原注
本書で言及されている書物
- 16 ニコラス・オードジェー「家政法」1692年
- 17 フランチェスコ・レディ「病気のアリアンナ」1685年
- 17 アントニオ・ラティーニ「現代の給仕頭」1692~1694年
- 19 ニコラス・レメリー「自然界の稀有で新たな不思議の集成」1674年
- 22 デッラ・ポルタ「自然魔術」1559年/邦訳 沢井繁男訳:青土社:1990年
- 27 ムッシュ・エミー(姓不明)「氷菓を上手に作る技術」1768年
- 28 メアリー・イールズ「イールズ夫人のレシピ集」1718年
- 29 ハンナ・グラッセ「手軽に作れる料理の技法」1747年
- 31 ボレラ「宮廷と田舎の菓子職人 ― あるいは家政婦の手引書」1770年
- 35 リチャード・ブリッグズ「料理の新技術 ― 実践にもとづく、すべての家政婦のための完全手引書」1792年
- 35 メアリ・コール「コール夫人の完全手引書 ― あらゆる料理の詳細な調理法」1788年
- 36 フィラデルフィアの婦人「ペストリー、ケーキ、砂糖菓子の75のレシピ」1828年
- 50 アンドルー・W・トゥア「呼売りたち」1897年
- 52 メアリー・アンティン「約束された土地」1912年
- 64 レイ・オールデンバーグ「グレート・グッド・プレース」1989年
- 66 日本アイスクリーム協会「アイスクリームの歴史と背景」
- 69 「ソーダ水他飲料の標準マニュアル」1897年
- 78 チャールズ・ランホファー「美食家」1894年
- 78 ファニー・メリット・ファーマー「ボストン・クッキングスクール・クックブック」1896年
- 86 「アルキマギルス アングロ-ガリクス ― 料理のすぐれた調理法と実践」1658年
- 86 アグネス・B・マーシャル「A・B・マーシャル婦人の料理書」1888年
- 86 アグネス・B・マーシャル「すてきなアイス」1894年
- 105 ウォルター・W・フィスク「アイスクリームの本」1919年
- 119 マックス・アップル「アメリカをオレンジンに染めて」1976年
巻末レシピ
- メアリー・イールズ夫人のアイスクリーム(「イールズ夫人のレシピ集」より/1733年)
- ハンナ・グラッセのアイスクリーム(「手軽に作れる料理の技法」より/1755年)
- リチャード・ブリッグズのアイスクリーム(「料理の新技術」より/1792年)
- モンティセロのアイスクリーム(米国国会図書館所蔵トーマス・ジェファーソンのメモ他より)
- 「フィラデルフィアの婦人」のアイスクリーム(「ペストリー、ケーキ、砂糖菓子の75のレシピより/1828年)
- シナモン、ショウガ、ライ麦パンのアイスクリーム(「美食家」より/1894年)
- アイスクリーム・コーン(「男に家庭を恋しくさせる料理」より/1907年)
- バニラ・アイスクリーム フィラデルフィア風(「ボストン・クッキングスクール・クックブック」より/1896年)
- チョコレート・アイスクリーム・ソーダ(シオドア・ケイのレシピより)
- パープル・カウ(「アイスクリーム新レシピ集」より/1946年)
- オーバー・ザ・トップ・サンデー(「ビュレッティン・オブ・ファーマシー」より/1918年)
- チャプスイソース・フォー・サンデー(「アメリカ・調理の科学百科事典」より/1910年)
- バナナ・スプリット(「リグビーの頼りになるお菓子の先生 ― ソーダ、アイスクリーム、シャーベットの最新完全ガイド」第13版より/1920年)
- アイスクリームの植木鉢(「アイスクリームはパーティの独創的なデザート」より/1936年)
- ボヘミアン・ガール(「リグビーの頼りになるお菓子の先生 ― ソーダ、アイスクリーム、シャーベットの最新完全ガイド」第13版より/1920年)
- チョコレート・マシュマロ・サンデー(「食べ過ぎ注意のアイスクリームとソースのレシピ」より/1937年)
- スイートコーン・アイスクリーム(クローディア・フレミングのレシピ)
- ロックフォールチーズと蜂蜜のアイスクリーム(デヴィッド・レボヴィッツのレシピ)
- ココナッツ・アイスクリーム・サンドイッチ(ピシェ・オングのレシピ)
- 青のりのアイスクリーム(カノウユミコのレシピより)
- バナナ-ペカン・アイスクリーム(「シチリアの海の幸 ― 息づく伝統から生まれたレシピと物語」より)
- バニラ・ジェラート、バナナ&カレー入り(デヴィッド・レイトのレシピより)
- エッグノッグ・アイスクリーム(ジュディス・サットンのレシピ)
- アボカド・アイスクリーム・パフェ(レニー・マートンのレシピ)
- スモークサーモンのアイスクリーム(ジョン・ウィリアムズのレシピ)