黒いユーモアでどぎつく味付けされた変態犯罪小説、但し後味は軽め
美貌の天才料理人、オーランドー・クリスプ。彼は料理評論家アルトゥーロ・トログヴィルを殺害した罪で逮捕、投獄されてしまう。その他の罪についてはさておき、トログヴィルについては無罪を主張するオーランドー。彼はその生い立ちから現在に至るまでの人生について、牢獄の中で書き始める…。本書はその自伝の形を取る。
トログヴィル殺しの犯人についての謎解きの要素があるため、広義の推理小説には含まれる。が、謎解きの手がかりは読者に提示されない(自伝形式に留意せよ)。分類するならば、変態的犯罪小説、といったところか。題名にはっきり示されている通りその手の話が含まれるのだけれど、軽妙な表現(ふざけてるとも言える)でさらりと描写されているために、おどろおどろしさはない。どぎつい衣にくるまれてはいるものの、内容は単純。なお、作中には簡単な肉料理のレシピも登場する。たまには悪食もいいかも、と思う時間に余裕のある向きにのみお薦めする。
私を魅了してやまないのは、肉(フレッシュ)だ。幼少期にすでに味を知っていたのは、かつて四本足で歩いていた肉か、翼を持っていた肉だけであったが。食肉は肉であり、肉は食肉であるが、”肉(フレッシュ)”という言葉のほうが本質を――私という人間を支配する情熱を凝縮したエキスをより的確に表現している。 引用元:「カニバリストの告白
本作は英国生まれの覆面作家、デヴィッド・マドセン2作目の小説。調べてところ、この名義で出されている本は本書含め4冊であるようだが、3作目に「Confessions of a Flesh-Eater Cookbook」なる作品があることを知って驚いた。本書のレシピ本…何だかそちらの方が興味深いではないか。