火によるヒトの進化論仮説
火は、ヒトにより多くのエネルギー摂取を可能にした。このことがヒトの身体構造、とりわけ消化器官と脳に大きな影響を与え、遂には現生人類への進化を促した―。本書は人類学を専門とする著者による、火による進化論仮説である。生食実践者の体重の変化、加熱/非加熱食品の消化の考察、ヒトと他霊長類の消化器官の比較といった現代の実験結果の他、類人猿の歯・骨、脳容量の変化など様々な視点から、火=料理がヒトに齎した劇的な変化を検証していく1冊。お薦め。
本書において私は新しい答えを示す。すなわち、生命の長い歴史のなかでも特筆すべき "変移" であるホモ属(ヒト属)の出現をうながしたのは、火の使用と料理の発明だった。 引用元:「火の賜物―ヒトは料理で進化した
私個人的なことを述べると【料理における加熱=ビタミン類などの栄養素の破壊】という先入観が大きく、本書述べるところの【料理による加熱=消化し易くなる=効率的なエネルギー摂取が可能になる】という視点は正に目から鱗が落ちる思いで、一気に読んだ。ただ第7章の部分については多々疑問に思う部分が含まれていたが、そうした引っかかりを差し引いても非常に面白い。
ただ読んでいて少し気になったのは、本書では料理=火による加熱、と行間で定義しているようだということ。お刺身など生の食材を日常的に食べる日本人の観点からすると、料理=必ずしも加熱を意味しないので、そのあたり時々頭の整理が必要になった。そして校正が甘いのも、こうした学術寄りの書籍においては特に残念に感じる。
目次
- はじめに 料理の仮説
- 第1章 生食主義者の研究
- 第2章 料理と体
- 第3章 料理のエネルギー理論
- 第4章 料理の始まり
- 第5章 脳によい食物
- 第6章 料理はいかに人を解放するか
- 第7章 料理と結婚
- 第8章 料理と旅
- おわりに 料理と知識
- 謝辞
- 注
- 訳者あとがき
- 参考文献
- 索引