1996年刊
好きこそ物の上手なれ
萩尾望都。昭和44(1969)年のデビュー以来、「ポーの一族」「トーマの心臓」「11人いる!」「銀の三角」などジャンルを軽々と超えた名作を生み出してきた、殆ど伝説的漫画家(萩尾望都の後進漫画家に対する影響については氷室冴子の随筆「ガールフレンズ」を読まれたし)。一昨年(平成28/2016年)、実に40年ぶりに「ポーの一族」新作が発表されたのも記憶に新しいところ。そういえば「ポー」触発系を標榜した某テレビドラマは標榜したことを取り下げて欲しいくらいの出来だったけれど、宝塚の舞台はどうだったのだろう。
閑話休題。「ケーキケーキケーキ」について。作品最終頁の表記によると、1970年7月の制作であるらしい。
主人公のカナは3人姉妹の末っ子。才能のある2人の姉に対し、今一つ他の目を惹く要素を持たないと思われたカナだったが、お菓子に対する鋭い舌を持っていた。姉のパリ留学に同行したカナは、日本で偶然出会った本物のフランス菓子職人アルベールの父・ルイに弟子入りを志願する…。典型的な「みにくいアヒルの子」話型で、筋には全く捻りがない(本作の原作者は一ノ木アヤ)。他の萩尾作品の持つ奥行きと比べ、正直かなり物足りない印象が残る。巻末のフランス菓子研究家・大森由紀子の、殆ど主人公カナと二重映しになる静かな解説がいい。
個人的なことを述べさせてもらうと、実は私は某授賞式で萩尾望都さん御本人にお目にかかったことがある。その時サインを戴いた「ポーの一族」は、宝物として本棚に鎮座ましましている。
目次
- ケーキケーキケーキ
- オーマイ ケセィラ セラ
- 解説 大森由紀子
1996年刊