食事と恋愛の強固な結びつき:小説版トレンディドラマ
広告代理店に勤める料理上手の独身貴族(!)・大西俊介と、彼を取り巻く女たちの短篇小説連作集。私が学生時代(バブル崩壊後)に読んだ時点で既に「何とバブリーな」と慄いたのだけれどそれもそのはず、本書の単行本が刊行されたのは1991年2月。つまり、日本のバブル景気の終焉時に重なるのだ。本書を読まれる際は、まずそのあたりを念頭に置かれたし。
「俊介はどうした!?」と上役が大声で訊くとする。
「彼なら早引けして、女のために家で料理を作ってます」と誰かが答える。
「あのバカが!」 引用元:「COME ON TO MY HOUSE」(「デザートはあなた」所収) 」
大西俊介には山口奈々子というセラピストの恋人がいるのだが、彼の周囲を取り巻く魅力的な女たちとも頻繁に手料理の食卓を囲む。二人きりで。その自由で浮ついた、余裕。その空気感は個人的に好み。但し小説全体は、これといった中身を伴わない軽さ。食欲と性欲という組み合わせも直截すぎて何等捻りもない。
森瑤子の著作は、思い出せる限りこの1冊しか読んだことがない。作品よりも作家本人の存在感が大きいという珍しい人。1990年代の初めにまだ50そこそこで亡くなった際、安藤和津が泣きながらインタビューに答えていた映像とセットで思い出す。ひとの記憶って不思議。
目次
- COME ON TO MY HOUSE(帆立貝のシノワ風、レモン味のパスタ、イタリアン・サラダ、牛の胃袋のポモドーロ風煮込み)
- CATCH & RELEASE(鱒のルイベ、リゾットの白ワイン風味、鱒のムニエル)
- ヨロン島の熱い風(タンポポと花のサラダ、山羊汁)
- 人魂狂騒曲(人魂の三杯酢、人魂の和風ステーキ)
- サティスファクション(筍のくわ焼、筍ご飯、苦竹汁、肉じゃが)
- 朋あり遠方より来たる(ピータンとキューリの前菜、中華粥、腐乳、ザーサイ、香菜、油條)
- 雨降りかけて地固まるの巻(しぼりたてのオレンジジュース、苺の生クリーム添え、仔羊の腎臓と玉ねぎのソテー、薄くカリカリのトースト、濃いミルクティー)
- ケイタリング・サービス(サーディン丼)
- セクシー・ゲーム(究極の自家製生ハム、ワインと玉ねぎのズッパ、スズキの岩塩包み焼き)
- カントリー・スタイル(羊一匹の丸焼き)
- パパ・ドーブレ・ポルファボール(フローズン・マルガリータ)
- 磯のアワビの片思い(アワビのシャブシャブ、万寿、鉄火丼)
- 過去からの声(特製サンドイッチ、山羊のチーズ、ムートン・ロスシルト)
- I LOVE YOU & GOOD BY(スモークサーモン入りオムレツ、ピンクシャンパン)
- 象牙の塔と白雪姫(海蜇拌三絲、鶏の塩蒸し)
- バリ島で出会った女(豚足の煮こごり、堯柱荷葉飯、レモングラスのサラダ)
- 苦戦善戦の巻(キャビアのオアスタ、ポモドーロのパスタ、かぼちゃのニョッキ、フェラーリ)
- 幻のパーティー
- デザートずくめ(チーズケーキ、バナナ・クリーム・パイ、ティラミス、カラメル・アイスクリーム、チョコレート・ムース、フルーツ・コンポート)