紅茶、パスタ、銀座のバー…ようこそ、道楽者の世界へ
嘗てテレビ番組の面白い時期があった。多チャンネル化による番組濫造の前。Webはまだ市民の手にはなく、インターネットによる情報爆発より昔のこと。相対的に、テレビ番組の持つ情報濃度は高かったと思う(見ている私が子供だったこともあろうが)。
1990年代にフジテレビ系列で放送されていた知的情報番組「ワーズワースの庭で」。45分枠の中で、毎回1つの主題を「道楽者」の視点から掘り下げていく。ドキュメンタリ風、旅番組風、或いはドラマ風と、表現方法はその回毎に自由に選択された。今は亡き十代目坂東三津五郎(当時は八十助)と河野景子がスタジオを預かり、ナレーションは岡田眞澄、イッセー尾形に近藤サト。英国浪漫派の詩人ワーズワースのとある詩を逆さにして詞にしたという主題歌「シャ・リオン」(故エリ)の、どの国のものとも思えない不思議な旋律。細部までこだわって作り込まれたこの番組自体が、道楽とさえ見える仕掛けが好もしかった。
本書はこの番組の書籍化。番組ほどの密度はないが、本書もお薦めしたい1冊。ハードカバー版/文庫版共に絶版となっているようだが、道楽の世界を目指すなら、その入り口をゆるゆると探すのも一興ではないか。そう、番組はアイコンとして機能する道楽の世界への案内人、竹中直人/清水ミチコのこの一言で始まる。
ようこそ、ワーズワースの庭へ。
目次
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